天使のすむ湖36

雪美  2006-08-28投稿
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その日から香里は徐々に回復し、四月の桜が咲く頃にはお花見がしたいと言い出して、隣の山まで二人で花見をしたり、高校への送り迎えも香里が真っ赤なポルシェでしてくれていた。
もちろん一日二時間の勉強も再開していた。帰ると、まず書斎で宿題と復習などを済ませて夕飯になり、キヨさんがおいしい夕食を作ってくれた。

その送り迎えが、少し離れたところで乗り降りしていたにもかかわらず、学校では問題になり、生徒指導室に呼び出されて、苦し紛れに、親戚のお姉さんで、家庭教師してもらっているのだと言った。疑わしき感じもしたようだが、なんとか誤魔化した。まさか俺の恋人だなんて言ったら指導だけでは済まないからだ。
岬と英治にも言わないようにと、メールで送った。

それから身の回りがまた騒がしくなり、度々俺のところへ、香里と一緒のところを見かけた男子生徒たちが、紹介してくれとか、家庭教師を頼みたいとか言う奴が増えた。その度に断り続けて、落ち着かない日々を送っていた。

そんなある日の放課後、俺は学年でも優等生の桜井弘に廊下で呼び止められた。
「おい相馬ぁー最近成績伸びてるみたいだなーなんか秘訣でもあるのかよ」
「ただ専属家庭教師に教えてもらってるだけだよ。」
俺はまた来たかとうんざりしていた。そそくさと行こうとしたが、行く手を桜井にふさがれて、
「俺さ、東大法学部に受かりたいんだよ、いい家庭教師がいないか探してて、今の成績じゃまだ不安なんだよ、その親戚の人に頼めないかなー」
ほらきたーうんざりしながら
「ダメだよ、俺専属なんだからなーじゃあな、」
と行こうとしたが、今度は桜井が両手で拝むようにして頼んできた。
「しつこい奴だなーだから、俺専属だからダメなんだよー」
もう一度言ってみたが、引き下がらず
「そんな事言わないでさ、お金ならいくらでも払うからさー」
「そういう問題じゃないんだよーダメなもんはダメだってー」
だんだん声を荒くして断った。
しかしその日だけで懲りずに、毎日頼み込んで、最後には土下座まで始めてしまったので、屋上に場所を変えて話す事にした。




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