かけがえのないもの 2

デフレーター  2010-06-22投稿
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「まあ…とりあえず、あがれよ」

「お邪魔しまーす」

隼人の言葉に被せるようにそう言うと、瑠奈はさっさと部屋にあがった。

「うわっ、お兄ちゃん散らかしすぎだよー。しょうがないなぁもう…」

瑠奈は隼人の部屋を見るなりてきぱきと片付けを始めた。

「自分でやるから大丈夫だよ。いきなり来るから片付ける暇なかったんだよ」

隼人が瑠奈を押し止めて部屋を片付ける。

ようやく2人くつろげるスペースが出来た。

「で?なんで急に来たの?」

飲み物をテーブルに並べ、隼人は真っすぐ瑠奈を見て尋ねた。

「うん。なんかいきなり会いたくなっちゃったんだ…」

瑠奈の表情はどこか悲しげだった。隼人は胸を衝かれる思いだった。

こんな瑠奈の表情を見るのは初めてだった。

それに…

「瑠奈…どうした?顔色悪いぞ?」

具合でも悪いのだろうか。瑠奈の顔色は少し青ざめているように思えた。

「え…?そ、そうかな?」

瑠奈は慌てたように笑顔を作る。明らかにおかしい。

「何があったんだ?急に来てみたり…会いたかったとか言ってみたり」

「いいじゃん!私はお兄ちゃんの妹なんだから、会いたい時に会いに来たっていいでしょ!?」

今度はすごい勢いで怒りはじめた。隼人は何も言えなくなった。

「あ…ごめんね、急に怒ったりして…でも…」

「いいよ。まあ詳しい話しは後にして…腹減ってないか?何か作るよ」

隼人はそう言うと立ち上がってキッチンへ向かった。

瑠奈が来た時は手料理を振る舞う。

隼人が自分自身で決めたルールだ。

「うん!メニューはお兄ちゃんに任せるよ。って言いたいとこだけど…」

瑠奈は隼人の方を見てにっこりと微笑んだ。

「オムライス食べたいな!お兄ちゃん特製のオムライス」

「へぇー…瑠奈からリクエストするって珍しいな」

隼人達の家は両親が共働きなのでいつも留守がちだった。

だから隼人は瑠奈の親がわりのような役割を担っていた。

瑠奈が隼人に懐いているのもそのためだった。

瑠奈は昔から隼人の作るオムライスが大好物だった。

リクエストを受けた隼人は嬉しい反面、どことなく不安な思いを抱き始めていた。



続く

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