『ねぇ、不思議な髪の色だね』
一人の少女の声が空耳のように聞こえた。
「・・・ねぇ、紅茶・・・たのんで。」
「ん?あ、分かった。紅茶・・・ね。」
麗久は店員を呼び、純弥の紅茶と自分のアイスコーヒーをたのんだ。
純弥は麗久がたのんでいる間も、イタリアの喫茶店で会った少女のことを思い出していた。
『あたしのは、見ての通り金色なの』
そう、その少女の髪はきれいな金色で、そう言われたとき見た瞳は深い緑色をしていた。
『何飲んでるの?』
『見て分からないの、紅茶だよ』
自分は父を守るという仕事から解放されたばかりで、機嫌は最悪だったのを覚えている。だいたい、イタリアで同い年の子はもうみんな僕に近寄ろうとしなかったのに同い年、もしくはそれより一つ下かそれくらいの女の子が近寄ってくるのは物好きとしか言いようがなかった。
「・・・・物好き、かぁ・・・」
「何か言った?」
「いや、別に・・・」
純弥は頬杖をつく。
麗久はふと思った。朝日を受けて光る自分と同じ色の髪は本人を含め綺麗だと思った。なるほど、学校の女子が騒ぐのにもうなずける。
(って、あたしバカじゃん。神経がどうかしてる、こいつを見て綺麗だなんて)
純弥は人通りの少ない外を眺めている。
(紅茶か・・・・それをたのめば彼女が来てくれるとでも思っているのか、あ〜、自分に腹が立つ・・・・)
彼女は僕に本名を名のらないまま逝ってしまった。そう、僕は彼女のあだ名しか知らない。良く通っている喫茶店へ行き紅茶をたのむとかならず現れた。
「・・・スカイラークはバカだね・・・・・・」
「え?」
麗久は不意打ちを食らい、不思議な声で聞き返した。
「心臓、頭・・・僕の弱点といえるところは、そのくらい・・・あとは、左肩の関節が外れやすいことくらいかな、まぁそこらへんの弱点は技術で補っているけどね・・・・」
麗久にはなぜいきなり純弥がそんな話をはじめたのか分からなかった。
純弥は続ける。不幸の結末の話を・・・