この長い髪は
誰の落とし物だろう
僕は憶えていない。
そう言えば
こんな口癖の
彼女がいた。
「好きと愛してるの違いがわかる?」
僕はこう答えたっけ。
‐僕と君の違いと同じさ
人間だけれど
中身はきっと違う。
僕がそう言うと
彼女は笑って
僕も笑った。
その夜、彼女の雨が
真っ白なシーツの上に
降ったのを憶えてる。
翌朝にはすっかり
止んでいたことも。
一体この長い髪は
誰の落とし物だろう…
僕は何も憶えていない。
僕は何も…