『しかし、ユキエ。お前には驚いたよ。
実は俺も、ユキエと同じ事を考えていたんだが、
もし、お前の代わりに、俺が発言していたとしたら、
正直なところ、お前みたいに、上手く話せる自信は無かった。』
俺の言葉に、ユキエは一瞬、驚いた表情を見せたが、
俺は、その後に更にこう続けた。
『俺達の言いたい事が、理解出来るか出来ないかは、
あの年頃の子供達にとっては難しいところだ。
お前が、あのクラスメイト達に話した事で、
ユウにとって、絶対に良い結果を生むとは断言出来ないが、
結果はどうあれ、今後も俺達は親として、ユウの事を守っていかなくてはならない。』
長い廊下を夫婦2人、並んで話しながら、
俺達は玄関に向かって歩いていた。
『そうね。
私も、あなたと同じ気持ちです。』
そう言って、ユキエは笑った。
玄関を出ると、
俺とユキエに、すがすがしい太陽の光が降り注ぐ。
『よし。これから、お前の職場まで急ぐぞ!!』
『はい!!
運転手さん急いでね!!』
『まかせとけ!!』
気分上々だ。
もちろん、まだまだ問題が解決したとは言えないが、
心の中のモヤモヤが、一気に解消されたからか。
キィ〜…キィ〜…キィ〜………
ポンコツのチャリのむせび泣く声が、
さえない俺へのエールにさえ思えた。