隼人と瑠奈の二人分、オムライスが並んだ食卓に
兄妹は向かい合って座った。
昔からもう何度も繰り返されてきた食事の風景。
「うーんやっぱお兄ちゃんのオムライス最高!食べなくても美味しいって分かるよ。」
「子供の頃から何度も作ってたからね。瑠奈のために。」
とにかく褒めちぎってくれる瑠奈に、隼人は照れ笑いを浮かべる。
「ありがとう、お兄ちゃん。いただきまーす」
「いただきます」
二人はオムライスを一口ずつ頬張った。
「んー!これこれ!私が大好きなオムライス。昔からすごく好きだった味!」
「ありがとう…瑠奈」
本当に美味しそうに夢中でオムライスを食べる瑠奈を、隼人は真剣に見つめた。
「どうしたの、お兄ちゃん?顔にケチャップついてる?」
「いや…瑠奈、あのさ…」
「なぁに?」
隼人は口を開けかけては閉じ、言葉を探した。
「寂しくないか?父さんも母さんも遅いし。」
瑠奈は一瞬呆然と隼人を見たがやがて声を出して笑った。
「…ふふ…ははは!もうやだーお兄ちゃんったらー!」
「何がおかしいんだよ。」
隼人は少しムッとした。
「お兄ちゃん私が来るたびにおんなじこと聞くよね。」
「だって心配だしさ…」
隼人はそう言いながら、家を出る時のことを思い出した。−−−
「お兄ちゃん、ほんとに行っちゃうんだね…」
瑠奈は少し寂しそうな表情で隼人に寄り添った。
「うん。大学、ちょっと遠いから…」
「だよね…」
隼人は瑠奈の頭をごしごしと撫でた。
「大丈夫だよ。もう会えなくなるわけじゃないんだし…電話もメールもできるじゃん。」
「うん…そうだね。いつでもお話できるもんね。」
瑠奈は満面の笑みで隼人を見上げた。
その笑顔が無理をしているようで、隼人は罪悪感すら抱いた。
「瑠奈、お兄ちゃんがいなくても、寂しくないよね?」
「うん!もうこれっきりサヨナラってわけじゃないんだし、お父さんもお母さんもいるから…だから…」
瑠奈は隼人の目をしっかり見て言った。
「私のことは心配しないで、一人暮らし頑張ってね、お兄ちゃん!」
瑠奈の言葉が本心でないことを、隼人は知っていた…
続く