ワンダにはちょっと変わった人が多い。
ノックさんもヒノメさんもテツさんも、みんな普通ってわけではなさそうだった。
でも、それじゃ伊島さんが僕をワンダに連れてきたときに言っていたことには合わない。
歯車がずれた人っていうのは、性格がブッ飛んでる人や、僕のように暗い出来事を持ってるとかヤバイこと背負ってる人を指してたはずだ。
でも、今までに会った人たちからはそこまでの違和感は感じない。
伊島さんが俺を落ち着かせようとして言ったんだろう。
そういえば、ノックさんの話では、ワンダにはあと二人住人がいるらしい。
どっちも最近はたまにしかいないからあいさつとかはまた今度にしとけって言われたけど、その二人も気になるな。
コンコンッ。
部屋の扉がノックされた。出ると、ノックさんがいた。
「ノックさん。どうかしたんですか?」
「いや、よく考えたらここ来てそろそろ10日ほどだろ?そういや、春が高校に行ってるとこを見たことねえからさ。大変だけどさ、そろそろ学校行け。勉強はちゃんとやっとけ。」
ノックさんはなにかと心配してくれる。
あの話を聞いたあともそれほど気遣いしないけど、ダメだって思ったことは、たぶん全部ちゃんと僕に伝えてくれてる。
僕は笑いながら答えた。
「大丈夫です。荷物もあらかた運びましたし、これ以上この部屋でボーッとしてても仕方ないですから。今日から学校ちゃんと行きます。」