「どこまで行ってきたの?」
「長野。友達のお父さんが旅行代理店やっててね、安いツアー紹介してくれたんだ。山とかすごく高くて、空気もいいし涼しいし、ほんといい所だったよ。」
瑠奈は旅行がよっぽど楽しかったのだろう。目を輝かせながら旅行中の出来事を話した。
「いい思い出になったね。よかった。」
隼人は安心した。やはり心配するほど寂しがってはいないみたいだ。
「でも…やっぱりお兄ちゃんと行きたかったな…」
「今度、連れてってあげるよ。」
「ほんと!?」
隼人は頷いた。
「お互い休み被ったらさ、瑠奈が行きたいとこ何処でも連れてってあげる。」
「ありがとう、お兄ちゃん。」
そう言って微笑む瑠奈は、何故か心から喜んでいるようには見えなかった。
「どうした?」
「ん?ううん。大丈夫だよ。…あー美味しかった。ごちそうさま!」
瑠奈はオムライスを食べ終えると両手を合わせて笑顔になった。
「瑠奈きれいに食べるよね。作りがいあるよ。」
食器を片付けながら隼人は瑠奈に言った。
「お兄ちゃんの料理最高だもん。」
瑠奈はそういうとまた悲しげな表情でつぶやいた。
「良かった…。」
「え?」
「ううん!独り言だよ!」
隼人は再び瑠奈の正面に座った。
「瑠奈…何かあったんだろ?言ってみなよ。お兄ちゃんでよければ力になるから…」
「やっぱお兄ちゃんには分かっちゃうんだね…」
瑠奈は隼人の目を真っすぐに見つめた。全く曇りのない瞳で見つめられ、隼人は少しどぎまぎした。
「瑠奈…」
「ありがとう、お兄ちゃん。でも、打ち明けてもどうしようもないことだから…」
「どういうこと?」
「それより、プレゼント!開けてみて。」
「あ、ああ…」
あまり追及しすぎるのも良くないかもしれない、と隼人は思った。女の子なんだから、兄であっても異性には言いにくいこともあるだろう…
隼人は箱を開けた。中にはクッションマットに包まれた箱があった。
可愛らしくビーズで飾り立てられた、小さな箱。
瑠奈は隼人の様子をわくわくしたように微笑みながら見つめていた。
続く