食事が全て終わり、テーブルの上がほとんど片付いた頃、再び鹿島が入ってきた。
手に分厚いノートのような物とビデオテープを一巻持っている。
「まず私の自己紹介を簡単にしてしまいましょう。
私は鹿島といい本業は弁護士です。
東京に法律事務所があります。
主な仕事は雷音寺雅則様の財産管理と、そして個人的な秘書の役目も果たしております。
では、そろそろ本題に入りましょう」
彼はテレビの横に立ってビデオテープを置きノートを広げる。
「確認のために順を追って話を進めてまいります。
まず、明彦様、喜久雄様、深雪様、孝子様、そして先日不幸にもご病気で亡くなりましたご長男の雅則様。
この五人の方が、今は亡き雷音寺重吉様の忘れ形見という事になります。
ただしお母様は違いますね。
ご長男の雅則様、次男の明彦様、そして三男の喜久雄様は最初の奥様、時枝様のお子様。
そして時枝様がご病気でお亡くなりになった後の二度目の奥様、恭子様のお子様が長女の深雪様と次女の孝子様という事になります。
間違いありませんね」
鹿島は一通り全員の顔を見回した後、再びノートに視線を戻した。
「では続けましょう。
孝子様がお産まれになって半年後に不幸な事故が起きました。
雷音寺重吉様と奥様の恭子様が乗った飛行機が、羽田沖に墜落したのです。
今からニ十三年前の事です。
お二人共に帰らぬ人となりました。
不幸中の幸いは、まだ生後六ヶ月だった孝子様を乳母に預けていった事でしょう。
当時、雅則様はニ十ニ歳、明彦様が十九歳、喜久雄様が十五歳、深雪様が七歳、そして孝子様はさっきも言った通り生後六ヶ月でした。
ここまで、よろしいですね。
では先を続けます。
この時すでに雷音寺重吉様は弁護士に遺書を託しておりました。
自分に万が一の事が起こっても困らないようにとの配慮だったのでしょうが、まさかこれほど早く開封される事になるとは、思ってもいなかったに違いありません。
ちなみにこの時の弁護士とは、私の父です。
そして、その遺書の内容は次のような物です。