「父上。如何様でございますか?」
のせていた、顎をあげ王子の姿をみつける。
「ああ、すまぬな。まぁそこの椅子に座りなさい」
低い声が目の前にある椅子を薦める。
王子が静かに座ると、それを見届けてから王は口を開いた。
「王子、そちはいくつだったかな?」
「は、来月で17になります」
手を拳に握り膝にのせる。じっとりと汗ばむのがわかる。
何を言われるのか。
王子の脳裏には何も浮かばない。
「王子、お前に嫁をとることにした。来月誕生日を迎えたら式だ。準備しとくように」
王は一息にいい、息子をみる。
目を見開き、王を見つめる王子は言葉がでない。
陸にあがる魚のように口がパクパクと動き、やっと喉の底より声をしぼりだした。
「ち・・父上・・・何を」
それが精一杯であった。
片手をあげ手を振る王の姿がみえた。
王の言葉は絶対。
王子はきたとき同様に静かに部屋をでる。
一国の王子なれば政略結婚ぐらい当たり前の事だとおもう。
だが、なぜそんな急ぐ必要があるのか。
釈然とはしなかったが、諦めは王族につきものであった。
遠く女性の一段がみえた。
母親と、その女官達だ。
目ざとく王妃の目が王子にとまる。
シュッ、シュッ・・
長いドレスの裾をひきづり王子に近付く。
良い香が手にもつ扇子を扇ぐたびに鼻孔をくすぐる。
「王子ではないか?いかがした?顔が冴えないぞ」
愛しい王子の顔を美しい指が撫でる。
王子は今王から言われた事を母に告げた。
母も初めてきいたらしく、目を丸くする。
「あれ、陛下は何をお考えか・・・あの人はたまに私に黙り一人で決める」
庭におかれたベンチに二人腰掛けていた。
「気に病むな、王子。私が王に申し立ててあげようぞ」
綺麗に微笑むと王妃は席を立ち遠ざかっていく。
王子は一人でため息をついていた