「じゃあお兄ちゃんからもプレゼント。」
隼人は瑠奈の近くに歩み寄り、一本のネックレスを瑠奈の首にかけた。
「うわぁーきれい!」
母がこの日のためにわずかな休みの時間を作って隼人に教えたビーズ手芸。
隼人は瑠奈のために一生懸命にネックレスを作った。
瑠奈の首元でそれは宝石のように輝いた。
「すごく似合ってるぞ、瑠奈。」
「ほんと。よかったわね。」
両親もネックレスをかけた瑠奈を嬉しそうに見つめた。
「お兄ちゃん…ありがとう!ずーっと大切にするから!」
「うん!瑠奈…きれいだよ。」
頬を紅潮させる瑠奈の頭を隼人は愛情を込めて撫でた。
隼人にとっても、本当に幸せな時間だった。
瑠奈の幸せが、隼人の幸せでもあった。−−−
「これ、あの時もらったネックレス。」
瑠奈は首にかけられたネックレスを指さした。
「まだ、持っててくれたんだね。」
隼人はそれだけで嬉しかった。
あれから10年近く経っても、ネックレスは色あせることなく輝いていた。
しかし瑠奈が大きくなってから、隼人は瑠奈がこのネックレスをしているのを見ることはほとんどなかった。
そのことを瑠奈に聞くと、瑠奈は答えた。
「だって何だか恥ずかしかったんだもん…あ、悪い意味じゃないよ!ただ…友達に聞かれてお兄ちゃんに貰ったって言ったらごちゃごちゃ言われちゃって…」
瑠奈は申し訳なさそうに下を向いた。
「お兄ちゃん、ごめんね…私、弱虫だね…」
隼人は元気付けるように瑠奈の肩に手を置いた。
「ううん。嬉しいよ。今まで大切にしてくれて…ありがとう。」
「今日は、お兄ちゃんにその指輪渡すためにネックレスしてきたんだ。お兄ちゃん、もしかしたら忘れてるんじゃないかって。」
瑠奈は気丈に笑顔を作った。
隼人は、はっとした。
「ほんとのこと言うと、ちょっと忘れかけてた…」
「やっぱりー」
はにかみながら隼人は思った。
大切な妹の、一生の思い出に残る誕生日だったのに…
瑠奈は鮮明に覚えていたのに…
どうして俺は忘れかけてしまったんだろう…
瑠奈と過ごした幸せな日々は
何よりもかけがえのないものだったはずなのに…
続く