翌日は雨だった。
今朝の天気予報では、これから暫くこの天気が続くだろうと言っていた。
それを聞いた瞬間、昨日のアオトの暗い表情が浮かんだ。
どこかで、そんな顔をしながら空を見ているのかな。
早く晴れの日が来ればいいのに。
私も雨の日の空は嫌いだった。
「角田さん」
名前を呼ばれて振り返る。
そこにいたのは結城くんだった。
私は驚いて、持っていた数冊の本を床に落としてしまった。
私は急いでその本を拾っていると、結城くんもしゃがんで手伝ってくれた。
結城くんと私は同じ図書委員に入っていて、今日は図書当番の日だった。
まさか結城くんと一緒だなんて。
うわ、やばい。
緊張するよ、ドキドキするよ!
「こんなに重いでしょ? 俺やるから」
「え、いいよ。大丈夫」
「よくない」
そう言うと、結城くんは私が持っている本を全部持っていった。
その時軽く結城くんの手が私の右手に触れた。
うわ、うわ、うわ。
手が、手が、結城くんの手が!
図書当番万歳。
浮かれてる場合じゃない。
私もちゃんと仕事しなくちゃ。
私は本棚の方に行って本の整理を始めた。
乱雑に本棚に突っ込まれたものや、適当な所に入れられた本を背ラベルに書かれている番号順に並べていく。
その作業中、私の顔はにやけっぱなしだった。
多分、というかきっと、この顔を見られたら引かれる。
やめよう。
でも止まらない。
「角田さん、この本どこの?」
そう言いながら、結城くんがこっちにやってきた。
そして1冊の本を私に差し出す。
「あ、これね。私入れとくよ」
「いや、場所覚えたいから教えて?」
「そっか……。この本はこっち」
私が歩き出すと、結城くんは後について歩いてきた。
あー、心臓が飛び出そう。
初めてこんなに近くで見るし、話したし。
幸せが一気に来たって感じ。
「ここ」
「分かった。ありがとね」
「うん」
お礼言われちゃったよ!
ダメだ、幸せすぎる。
その後も作業が続いたけど、その作業中ニヤけが止まらなかったのは言うまでもない。