「ごめん…こんな大事な事忘れてて…」
隼人は瑠奈に謝った。
自分が情けなかった。
瑠奈と過ごした時間が長すぎて
特別な日でさえも日常の記憶の中に埋もれてしまったのだろうか…
「謝ることなんてないよ。お兄ちゃんにお礼もできたし、思い出してももらえた。それで十分だよ。」
瑠奈は隼人の手を取った。
「お兄ちゃんは、こんな素敵なプレゼントくれたのに…お兄ちゃんの誕生日には私はいつも手紙とか似顔絵ばっかりだったから…」
「あー…そういえばそうだったね。でも…家の俺の机に全部しまってあるよ。」
「ほんとに!?」
「うん。瑠奈がくれた心がこもったプレゼントだからさ。…あー持ってくればよかった。」
隼人は後悔していた。
瑠奈からのプレゼントを置いてくるなんて…
自分自身への苛立ちも込み上げてくる。
瑠奈はネックレスをいつも大切に持っていてくれるのに、自分は何故瑠奈からのプレゼントを側に置かずにいたのだろう…
「お兄ちゃん、ありがとう。」
瑠奈は笑った。泣きそうなのを我慢しているような微笑みだった。
「お兄ちゃんには、このネックレスだけじゃなくて、いっぱいいっぱい、大切なものもらった。」
「瑠奈…」
「でも、私がお兄ちゃんのためにしてあげられたことって…ほとんどないんだよね。」
瑠奈は俯いた。目には涙が光っている。
「似顔絵も手紙も…あの時の私にできる精一杯のプレゼントだった…私、バカだから気の利いたプレゼントできないんだ…」
「そんなことないよ。瑠奈が、一生懸命自分で書いてくれた。それだけで、十分なんだよ。」
「お兄ちゃん、ほんとに優しいよね…」
瑠奈は隼人を見上げた。堪えられなかったのか、目から涙が伝っている。
「時々ね?私、お兄ちゃんの優しさ…疑っちゃうことがあるんだ…」
「…どうして?」
「だって…ほんとに優しすぎるくらい優しいんだもん。だから…時々、本心じゃないんじゃないかって…ほんとは私に不満いっぱいあるのに、私が悲しむのを見たくないから我慢してるんじゃないかって…」
顔を覆って泣いてしまった瑠奈の肩を、隼人はそっと抱き寄せた。
今日の瑠奈の言葉は、いつにも増して心に響いた。
続く