かけがえのないもの 11

デフレーター  2010-06-25投稿
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「あはっ…私、何泣いてるんだろ…」

瑠奈は涙だらけの顔を無理に笑わせた。

「あんまりびっくりさせるなよ。」

隼人も笑顔で瑠奈の頭を撫でる。

「お兄ちゃんの優しさは、いつでも本物だもんね。ごめんね?疑ったりしてて…」

隼人は瑠奈の頬に流れる涙を指で拭った。

「瑠奈…素直でいい子に育ったね。お兄ちゃんの育て方、間違ってなかった。」

「もうー!すぐそうやって子供扱いするー!」

兄妹は弾けるように笑った。

瑠奈が遊びに来る度にこのような笑いが起こってきたが、今日はこれが初めてだった。

「でも、ほんとにそうかも。」

瑠奈が言った。

「お兄ちゃんは、小さい頃から私のこと、いつも側で守ってくれた。」

「父さんも母さんも留守がちだったからね…俺が側にいてあげないとさ。」

「うん。ほんとに…お兄ちゃんが親代わりみたいだったもんね…」−−−


「じゃあ、行ってくるよ。隼人、瑠奈の面倒、頼むぞ。」

「うん!大丈夫だよ!」

「瑠奈、お兄ちゃんの言うことよく聞いて、迷惑かけないようにね。」

「はーい!行ってらっしゃい!」

両親はいつも隼人達より早く出かけた。

当初は子供二人で留守番させるのが不安だったようだが、兄妹は力を合わせ、助け合って留守を守った。

両親にもそれは認められ、安心して留守を任せるようになった。

小さい頃から瑠奈は、泣き虫で、甘えん坊で、いつも隼人と一緒にいたがった。

何でも隼人のすることを真似したがる。隼人の後をついて来たがる。

そんな瑠奈に、隼人は一心に愛情を傾けた。

瑠奈が困っていれば手を差し延べた。宿題に手こずっていれば、優しく分かるように教えた。

急な発熱の時はすぐ親に連絡し、帰ってくるまで付きっきりで看病した。

ただ甘やかすだけではない。瑠奈が間違いを犯せば、厳しく叱った。もちろんその後のケアも欠かさなかった。

瑠奈にはいい子に育って欲しかったから、隼人はただ甘やかすばかりではない、真の愛情を持って瑠奈に接していた。

瑠奈もそんな隼人に全幅の信頼を置き、心から慕っていた。

互いに支えあって来たからこそ、親がそばにいなくても、兄妹は真っ直ぐに育ってきたのだ。



続く

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