「あなたには普通の訓練で十分なのよ」
メディナはタオルで軽く汗を拭った。
「力が強い、というのも一つの才能だからね。ザックには残念ながら特筆すべきものが無いから」
「そうですか?オールラウンドにできる可能性はあると思いますが…」
「オールラウンというのが一番難しいのよ」
「…ああ、なるほど」
ダリルは大きく頷いて、手を叩いた。
「力、技、速さ…これらを水準以上までにしないと結局中途半端な形で終わってしまうわ」
メディナはそう言ってダリルたちに背を向けると、
「また明日」
と、言いながら林の奥へと消えて行った。
「どこへ行ってるんだろうな、あの人」
「さあてね。あの人に関してはわからない事だらけですよ」
エナンは小さく息を吐いて、立ち上がった。
「おい、ザック、起きろよ」
「う…ん」
ザックはダリルの呼びかけに目を覚ました。
「大丈夫か?」
「あ…あー、大丈夫。メディナさんが指導してくれるんだからさ」
「…お前、本当にあの人を信頼してるんだなあ。まあ、わからんでもないけどな」
ダリルは呆れたような顔で頭を掻いた。
「色んな事を教えてもらったからね」