鹿島が話を続ける。
「雅則様がお亡くなりになりましたのは、今から約三ヶ月前の、今年の一月十六日、死因は癌でした。
こちらから連絡したにも関わらず、葬儀に来ていただいたのは、確か孝子様お一人でしたね」
孝子はうつ向いたまま、寂しそうに小さくうなづいた。
「なんだなんだ、当て付けがましく!」
明彦が露骨に嫌な顔をする。
「葬式に行こうが行くまいが、勝手じゃないか!
それとも何か?
葬儀に出席した者しか遺産相続の権利がないって言うのか?」
「いえいえ、そんな事はありません」
鹿島は冷やかに笑うと、首を振って否定した。
「私は牧師ではありません。
従って心情的な事をとやかく言うつもりもありません。
それは遺産相続とは何の関係もない事です。
ここで重要な事は、雅則様がその短い生涯を独身で通され、遺産を受け継ぐべき妻も子供もいないという事です。
現在、雅則様の遺産を相続する権利のある者は、明彦様、喜久雄様、深雪様、そして孝子様の四人だけです。
その事は、遺産相続の書類に、一応明記してあります」
「あの…
一応というのは、どういう意味ですか?」
喜久雄が不審そうに尋ねた。
「それは私の口から説明するより、雅則様本人がご説明したほうがいいでしょう」
いったい鹿島が何を言っているのか分からず、呆気に取られている五人には構わずに、彼は持っていたビデオテープをセットし、そして再生した。
大画面のテレビがパッと明るくなり、そしてそこに映し出された映像は、こちらに向かって微笑む雷音寺雅則の姿だった。