「何をした、だぁ!?
あんな大それた事しておいて、何を今更!!」
「あんたを警察に引き渡すとなぁ、大金が手に入るんだよ!」
新たにこちらに近づいて来た、二人のうちの、
一人も言った。
「大金!?どういう事…
そんな…まさか!!」
お尋ね者、ってこと!?
「なぁ、それよりこいつ、
けっこう可愛い顔してんじゃん。」
酒臭い息を吹き掛けながら、右側の男が言う。
「どうだ?警察に引き渡す前にさぁ…」
戦慄が走った。
三人は、血走った目で私を見て、にやついている。
「いや…嫌ぁ…
やめてぇ!放してよ!!」
だが、いくら暴れたところで、屈強なその腕から逃れることは不可能だった。
私は冷たいコンクリートの上に簡単に寝かされ、
馬乗りされた。
涙がこぼれそうになり、私は目を閉じた。
男の身体が覆い被さってくるのを感じる。
私の頬を、涙が伝った。
だが、しばらくしても、男はそのまま、何の動きも見せなかった。
どういう事…?
私が目を開くと、そいつが気を失って倒れている姿を見る事が出来た。
「…!?」
「お、お前は…」
残り二人がそう言いながら見た方向を見上げてみた。
長い黒髪、頬の傷。
彼は一人の襟を掴んでもう一人に投げつけた!
二人は近くの壁にぶつかり、気を失ったらしかった。
が、周りに人だかりが出来始めたらしい。
中には私たちを指差す人たちもいた。
「チッ」
彼は私の上で気を失った一人を蹴飛ばし、
私を抱えて近くの塀に飛び乗り、走り出した。
路地裏まで行くと、
彼は私を降ろした。
「あ、あの、…ありがとう…助けてくれて」
彼は私の方を見た。
私は今初めて、彼の姿を確認できた。
ジーンズにスニーカー、黒地に赤い袖のジャンパーに、フード付きのパーカー。
彼が稀代なほどの美男だという事も、その時わかった。
「いちいち、例を言う暇は無いぞ」
…? あ、そうか。
急いでるの、解っちゃったか。そう思っていた。
「そうだね、もう行かなきゃ」
だが、彼はそうさせてくれなかった。
歩き出そうとしたら、私は肩を掴まれた。