第二章
屋敷という名のゲーム盤
1
「畜生!
兄貴はなんて気違いじみた事を考えだしたんだ!」
明彦がテーブルを強く叩いた。
「でもさ、宝探しなんて、ちょっとワクワクするじゃない」
友子が無責任な事を言う。
「ちょっと、静かにしててよ!
こんな馬鹿な事を止めさせる方法がないか、今考えてるんだから!」
深雪がヒステリックに叫び、煙草に火を着けた。
「それはちょっと無理みたい」
孝子がアイスクリームの最後の一匙を口に運びながら、誰に言うともなく言った。
「この計略は巧妙に考え尽くされているわ。
雅則兄さんの言う通り、ゲームをするしかないみたいよ。
遺産が欲しければね」
「ゲームゲームって言わないでくれ!」
普段は穏やかな喜久雄までが、必要以上にイライラしている。
「孝子、おまえよく平気でいられるな」
と明彦。
「だって、私は初めっから財産なんかいらないもん。
だから宝探しなんかもしないわ。
財産を誰かが独り占めしようと、国家の財源になろうと、私は全く興味がないの。
だから平気」
「じゃ、なぜここに来た」
「雅則兄さんの住んでいた家を、一度見ておきたかったの」
ドアが開いて鹿島が入ってきた。
彼はビデオテープをセットして、テレビのスイッチを入れた。
画面が明るくなり、笑顔の雅則が、再びテーブルに着いた。
「諸君達がこのテープを見ているという事は、全員が私のゲームへの参加の意思表示をしたというわけだ。
私個人としては、非常に嬉しい。
せっかく考えたゲームが無駄になってしまっては、とても残念だからね。
さて、ではさっそく本題に入ろうか。
このゲームは、いわば知恵比べという事になるかな。
やたらとその辺を探しても、とうてい見付かるもんじゃない。
私はぬかりなく権利書を隠したつもりだ。
喜久雄のところは二人組なので、ほかの者よりはやや有利かもしれないが、しかし、決定的なものではないだろう」
「カボチャが二つ集まっても、そこにあるのは二つのカボチャだ」
明彦が言う。
「でも、一つのカボチャよりはマシかもよ」友子が言い返す。