「しかしすごい偶然ですよね。あなたと彼女が同時期にこの場に集まるなんて」
「そうだよなあ。こんな事ないぜ、普通」
「まあ…ね。言い方は悪いかもしれないけど、リリアが賞金首になったお陰で再会できたのかなと思ってるんだ」
ザックは複雑な表情で言った。
「確かに。あなたがここへ来たのもリリアのご両親が農作業の手伝いを依頼したからですしね」
エナンは小さく頷きながら、汗に濡れた銀縁眼鏡をハンカチで拭いた。
「ところで、保養所の建設作業はどうなっているんだ?」
「順調に進んでいるらしいですよ。来月には完成する見込みだそうです」
「来月か。いよいよ本番が迫ってきたな」
ダリルは大きく手を叩いて、気合いを入れた。
「来月…」
ザックは緊張したような表情で、唾を飲んだ。
「おいおい、今から緊張してたら本番動けなくなるぞ」
「大丈夫ですよ。必ず安全なルートを確保して失敗しても逃げ切れる態勢を作りますから」
ダリルとエナンはその様子を見て苦笑いを浮かべた。
「いや、まあ…こういう事は初めてだから…」
ザックは口元をひきつらせながら、タオルで汗を拭った。
「さてと、家に戻るか」
ダリルは立ち上がって、大きく伸びをした。
「ダリル、後でちょっとうちに来て下さい」
エナンは銀縁眼鏡を光らせながら、小声でダリルに呼びかけた。