「ではさっそくゲームの詳しい説明に移ろう。
まず宝を隠してある範囲だが、それはこの屋敷及びその周囲の庭とする。
つまり、庭を取り巻くあの林は『O・B』という事だね。
勿論あの一本道も除外する。
次に特別除外エリアについて説明しておこう。
この特別除外エリアとは、この屋敷の中にあって、絶対に宝を隠していないという場所の事だ。
まず、二階の一号室から六号室までの六部屋が、これに相当する。
ここを除外しておかないと、他人の部屋にどかどかと踏み込むような事にもなりかねん。
次に調理場と、それに隣接する牧野夫妻の自室。
これもゲームから外す事にする。
牧野さん達の仕事や生活を、巻き込みたくはないのでね。
それに調理場を荒らされてしまっては、満足なディナーも望めんよ。
以上、特別除外エリアに財産相続書を隠していない事を、ここに宣言する」
雅則は片手を上げ、宣誓のポーズをとった。
「つまりだ。
林よりも内側で、しかも特別除外エリアを除いた全ての場所が、このゲームのゲーム盤という事になるかな」
彼はそこで一息つき、グラスのワインを飲み干した。
そして再びグラスにワインを注ぐ。
「さぁ、これでゲーム盤の説明は終わった。
さて、次に約束したヒントだがね。
ヒントはこれだよ」
右手にワイングラスを持ったまま、雅則はテーブルの下に屈んだ。
彼が再び姿を現した時、グラスを持った右手に一匹の猫を抱えていた。
「あら、あの猫?」
孝子が言った。
「知ってるの?」
隣の深雪が小声で尋ねる。
「ええ、さっき庭で見かけたわ」
「ヒントとは、私のこの右手の中にいる、これだ。
この猫の名前は『パブロ』といって、ご覧の通りの三毛猫だ」
そう言って、空いているほうの手で猫の頭を撫でた。
猫は雅則を見上げてニャーと鳴く。