「だがね、この首輪に意味はないよ。
これは私の屋敷に所属しているという印にすぎない。
従ってこの首輪には、仕掛けも手掛かりもない。
だから、やたらとこいつを捕まえたりするのは、止めてもらいたい。
肝心なのは、こいつが『三毛猫』で、そして名前が『パブロ』だという事だけだ。
しかし、これだけではちょっと難しいだろう。
だから、日を追うごとに少しずつヒントを出していくとしよう」
彼はテーブルの下に猫を戻すと、またワインを口に運ぼうとして、はたと止まった。
「おっと、肝心な事の説明を忘れていた。
実は諸君達に探してもらう財産相続の権利書だけどね。
これに有効期限を設ける事にするよ。
有効期限がないと、こいつを探し続けて、一生屋敷をさまよう事にもなりかねないからね。
その有効期限だがね。
諸君達がこの屋敷に着いた日から一週間としよう。
つまり、集まった日から七日以内に見付け出す事ができれば、鹿島君の手続きが間に合うようにしておこう。
もし七日以内に誰も発見出来なければ、これは効力を失い、ただの紙切れになってしまうのだよ。
その時には、『四人に五千万円づつを贈与し、残りを国に寄付する』という、例の遺言書の手続きを、鹿島君に取ってもらう事になっている。
この五千万円は、いうなれば参加賞だな。
最後に、諸君達に集まってもらう日にちだが、私の命があと三ヶ月という事なので、少し余裕を取って、今日から数えて、ちょうど半年後にしよう」
そこでビデオは終わり、画面はザーという音と共に無意味なものとなった。