五人はぐるっと中をひと回りした。
確かにほとんどがゲームの関係書だった。
将棋、碁は勿論のこと麻雀、トランプ、チェス、ボードゲーム、あるいはコンピューターゲームに関する本、洋書も多数あり、これもまたゲームの本のようだった。
あとはミステリー小説、ワインあるいは洋酒に関する本、パズルの本、料理の本、絵画の本、などである。
「料理の本は、全部牧野さんの本ですね」
鹿島が付け加えた。
「そしてこちらに並んでいますのが、雅則様が書かれた本です」
そう言って棚を示す。
そこには十数冊のハードカバーの本が並んでいる。
いずれも著者は雷音寺雅則となっている。
「この『チェスに関する十三の冒険』は、雅則様が考案されたチェスの序盤戦においての、全く新しい十三種の定石について書かれておりまして、世界的に話題になりました」
「ここにいれば退屈しないわ」
と孝子。
「ここは明日にでもゆっくり見るか。
さぁ、次だ」
明彦の号令で、皆はぞろぞろと図書室を出た。
「次は上ですか?」
喜久雄が鹿島に聞くと、彼はいいえと言う。
「上に行く前に、地下室をご案内してしまいましょう」
「地下室もあるの?」
深雪が呆れる。
鹿島は階段を指差した。
階段の左側面に確かにドアがある。
正面からでは気付かなかったが、この図書室の前からだとよく分かる。
つまり、このホールには計五つのドアがある事になる。
外への出入口、そして食堂、応接室、図書室、地下室だ。
地下室へのドアを開け、鹿島を先頭に一同は降りて行った。
階段は途中で一度折れて、なおも下に続いている。
下に降りるに従って、なにか空調のようなブーンという音がする。
やがて六人は厚手の透明ガラスのドアの前に出たが、中が暗いので様子が分からない。
空調のような音は、その中から聞こえる。
わずかな冷気が肌に触れる。
鹿島がドアのそばの電源を入れたので、ガラスドアの中がパッと明るくなった。
だが、こちら側の面が結露で曇っていて、以前様子が分からない。
鹿島に続いて地下室の中に入った五人は、思わず息を飲んだ。
そこは巨大なワインの貯蔵庫だった。
「さすがに驚かれたようですね」
得意そうに鹿島が説明を始めた。