かすみとの約束の時間まで、少し間が開いた哲彦の携帯に、下原文子からのメールが入っていた。
『今何してます?旅行楽しんでますか?今度私も行きたいです。友達との時間もあるから、わがままは言えないけど…』
『部屋で休んでるよ。これから飲みに行くけどね…。旅行については、日程とか今度話そう』
『はい』
文子の素直な返信に、哲彦は申し訳なさを感じていた。
だが、自分の心の中で、どうしてもかすみに対する密かな思いは、拭い去れずにいた。
たて続けに、麻由からメールがきた。
『今日、何時頃なら大丈夫?』
『確実とは言えないけど、夜の10時くらいだよ。今日、仕事休みで、明日学校だろ?無理しちゃだめだよ。』
『大丈夫だよ。哲さんに会う以外は、無理してないから』
『わかった。気をつけてな』
『うん』
しばらく、哲彦は考えた。
麻由が、こんなにも自分を慕ってくれている…でも密かな思いもある。
でも、何よりも問題なのは、距離の問題である。
最初はもっと、友好的な目的だったのに…いつの間にか、過去のトラウマも払拭されていて、2人の女性に好意を寄せられている。
哲彦的には、会社の仕組みもあり、転勤も出来るが、何よりも、20年近くの付き合いである義人や、剛夫と会いにくくなることを、懸念していた。
いつしか、義人とそんな話をしたことがあった。
『哲ちゃんに、心から好きな人が出来て、例えば遠くに住むことになっても、時間を作って会いに行くよ。…だから、俺や剛に気を使わずにいいよ』
義人は、過去に大切な人と友人に、怪しい団体の為に去られるとゆう辛い思いもしている。
それでも、自分の幸せのことよりも、哲彦の幸せの為に、少し距離を置くことになっても構わないとゆう、義人や剛夫のことを考えると、自分を慕ってくれている下原文子に、思いが、傾きつつあった。
今日、ダメもとで、彼女に、現在の自分の思いを伝えてみよう…それからでも、遅くはない