早朝。
いつものように店内と店先の掃除をする。だが、何故だかいつもとは違うことがある。それは・・・・・・。
「昨日何で助けてくれなかったんですか・・・・・・」
開店前なのに一人の少女が僕の周りにいるのである。
「どうもこうも、家出は良くありませんよ?」
「だって、家に私の居場所がないんですよ・・・・・・」
あら?なんだか面倒な事に・・・・・・。
「母が死んでから一年後、父は再婚したんです。その相手には連れ子がいて、その子は何でも出来る天才でした。その後徐々に私の肩身は狭苦しくなって来て・・・・・・」
少女の表情は曇っていく。細い肩は今にも脆く崩れそうに見えた。
「・・・・・・それで君は何がしたいんですか?」
「一人で生きて行く・・・・・・」
「両親が心配するかもしれませんよ?」
「あの親が気にするのは世間体だけですよ」
「そうですか・・・・・・ならもう僕は君を引き止めたりはしません」
「では、失礼しました」
少女は仰々しくお辞儀をしてから店を出て行った。
・・・・・・あの娘の人生、僕がとやかく言う資格は無い。
僕は再び開店準備に取り掛かった。
昼間は休憩中のサラリーマンやOLの方々がたまに数人来る程度なので僕の昼飯タイムでもあります。
自分用の昼飯を作っていると店の扉が開く。
「いらっしゃいませ・・・・・・え?」
お客様を出迎えるとそこには何故かあの少女がいた。
「アイスコーヒーを一つ下さい」
「あ、はい。かしこまりました」
一応お客として来たのだろうけど、何故またここに?というか学校は?
「何でまた来たのって顔してますね」
「い、いえ別に」
「・・・・・・かったんです」
少女は急に顔を俯せて何かを言った。
「今何と?」
「行くとこがなかったんです!」
・・・・・・あ、そうですか。
すると少女は僕の手を両手で掴み、
「ですからしばらくの間ここに置いて下さい!」
「えぇ!?」
ちょっといきなり過ぎじゃないかな!?
「雑用でも何でもしますから、お願いします!」
頭を深く下げる少女。
・・・・・・どうしましょう。多分僕がここで拒否したらこの娘行き倒れになりかねないし・・・・・・まぁ、良いでしょうかね。
「・・・・・・そこまで言うのであれば良いでしょう」
「本当ですか!?」
「はい」
「良かった〜」
明日から忙しくなりそうですね。