私は、
『クライアナノナカ』の
インタビューをする、
という形で
ディナーから色々
聞き出す事にした。
「さぁ、飲み物を頼もう。私が注文してくるよ」
「なんか、
至れり尽くせりで
申し訳ないですね。
じゃあ、
シャンディーガフを」
ディナーの口角が上がる。その様子は、まるで
好青年だ。
私は烏龍ハイに
見せかけた烏龍茶で、
彼と乾杯した。
料理も揃い、
和やかに晩餐は始まる。
「…という事は、
『クライアナノナカ』は
完全に君のオリジナル
なのかい」
「もちろんです。
俺は…引用はあるかも
知れませんが、シナリオ
自体をまるまる使ったり
はしません。
そこまでネタに困った
事はないですから」
ガスケットの影から
見える瞳に、嘘はない
ようだった。
同じ物書きとしては、
全く羨ましい自信だ。
私はカードを切り始める。
「不思議だ…」
「何がです?」
「君が書いた内容に、
とても酷似した事件が
あるんだよ…
ちょうど七つ、ね」
ディナーの瞳は、怒りや
戸惑いよりは、
興味津々といった感じで、私は少し戸惑う。
「…へぇ。あんな駄作と
同じ現実があるなんて。
…て事は、番犬さんは、
オリジナルかどうかを
疑っている……
というよりは、
俺がその事件に絡んでる
んじゃないかって
思われている訳だ」
ディナーは、見た目より
賢いらしい。
「そうは言っていないよ」
「なんか…そういう漫画
書けそうですね。
ノートに書いたら
人が死ぬ……みたいな」
ディナーは、この状況を
まるで面白がっている
かのようだ。
「じゃあ、俺の携帯は
『デス携帯』って訳だ」
ディナーは、ジャケット
から携帯電話を取り出した。
真っ黒な、折りたたみ式
のシンプルな携帯電話を。