「彼女?どうして?」
「彼女の実力は百人の兵隊に匹敵します。更には王に対して敵意を持っていてそれを実行しようとしていますから、有力な情報源を得ている可能性があります」
「なるほど!」
ダリルは納得したように大きく頷いた。
「彼女との協力態勢がとれたのは大きい。これを維持していけば、いい結果を得られる可能性が高いです」
「協力態勢か…彼女がどう思っているのか俺にはまだわからんのだがなあ…」
「もちろん、彼女を百パーセント信じている訳ではありません」
エナンは首を横に振った。
「都合が悪くなれば切り捨てられる可能性もあります。いい緊張関係を保ってやっていかないといけないでしょうね」
「だよなあ」
ダリルは大きく息を吐いて、頭を掻いた。
夜の闇がメディナの赤い髪を黒く染め、月の光が剣を黄金色に光らせた。
―お姉ちゃん!
聞き慣れた声が頭の中で響く。
―メディナさん!
そこにザックの声が重なる。
メディナはその声を合図に、剣を目にも留まらぬ速さで振り下ろした。
光が上下し、闇を切り裂く。
「偶然とは恐ろしいものね…」
彼女はポツリと呟いて、剣を鞘に収めた。