去年の新学期
「くぉらあぁあ!!玉置ぃ!!」
「うわっ何やねん、先生」
「お前何や、その髪は!」
「お、似合ってるやろ?」
「何が似合ってるや!今すぐ家帰って、染め直してこい!」
(またあいつか)
怒鳴られている男子生徒を横目に通り過ぎ、俺は新しいクラスに入った。
教室内はなんとも言えない居心地の悪い空気が流れていて、2、3人の喋り声が微かに聞こえるだけだ。
「えー嫌やって。俺、新しいクラスで友達作らなあかんねん。てことで、失礼しまーす」
教室内にいても、廊下の声がよく聞こえる。
「あ、こら!待て!まだ終わってへんぞ!!!!」
追いかける先生の声。それを無視してあいつが勢いよく開けたのは、この教室の扉やった。
「おはよう!みんな!!」
しーん
「なんや、皆、腹でも痛いんか?」
嘘やろ…こいつまさか…
「お、翼。お前もこのクラスか?」
あいつの後から入ってきた直井 拓朗が尋ねる。それとほぼ同時に、俺はクラス分けの名簿を見直す。そして同じクラスに見つけた名前。
「ああ、そうや。だから皆ぁ!よろしくなあ!」
俺は名簿に書かれた“玉置 翼”の名前に、がっかりした。