“玉置 翼”
校内であいつを知らん奴なんかおらんやろ。
あいつとは関わりたくないな。
やかましそうやし。
「うわ、なんで美弥が前の席やねん」
「うち“高橋”やもん」
前の席の女子に声をかけながら、あいつは俺の隣に座った。
ますます最悪。
「あ…えと、皆さん、よ、よろしくお願いします」
いつの間に入ってきたのか黒板の前に、消えそうな声で挨拶する先生がいた。
去年やってきたばかりで、まだ慣れないのかびくびくしている。
「あ…早速なんだけど…学級委員長を決めなきゃならなくて…誰か…」
こそこそと教室のいたるところで話声がする。誰も話を聞いてない。
だんだん先生がみじめになってきた。
「先生、俺やりますよ」
手をあげると、先生が安心して笑った。
「本当?じゃあ藤森君に…」
「えー先生!俺もやりたい!」
突然玉置が立ち上がる
「え…」
戸惑う先生。
「俺、やりたい!」
「で、でも…」
「じゃあ俺いいです」
やりたかったわけじゃないし。
その時やった。
「何やねん、大してやりたくないなら最初から言うなよな。やりたい奴の気持ち考えろよ」