静まりかえった広いステージ。
薄暗い中で自分達に向けられたたくさんの瞳。
キーボードの前に立つと他のメンバーも緊張しているのが感じられた。
呼吸を調え顔をあげる。
振り返った翼が顔いっぱいに笑みを浮かべて笑いかけてくれた。
美弥はあの大人びた表情で頷いて、その隣の秋奈は馬鹿にしたように舌を出したけど、すぐに笑った。
聖二はやっぱり緊張しているのかどこかぎこちない笑顔で、反対に波音は今にも声を出して笑いだしそうだった。
猛はすぐ目の前でこっそりピースしていて、マイクの前に立った拓朗がこっちを見て“大丈夫”と口を動かし、私は頷く。
そして、すぐ左隣を振り返る。
いつものまっすぐな慶太郎の目がこっちを見つめていた。
スティックを握りしめた右手を軽くあげ、口元がにやりと笑う。右手首であのミサンガが揺れた。
私はもう一度頷いて、しっかり前を見る。
演奏するのは、初めて皆とやった歌。
鍵盤に触れる指先。
私はやっぱり大きく息を吸い込む。
そして、私の音と共に、最終の歌が始まる。