「何急にきてんだよ…」
「別にいーじゃん。暇だったからお兄ちゃんと遊んであげよっかなーって思っただけ。」
麻友美はさっさと部屋にあがった。
「俺そんな暇じゃないんだけど。」
「えー!どっか行くの?」
「いや彼女来るんだよ。」
亮平は綾香にまだ麻友美を紹介していない。
もしこの状況で綾香が来たら…
今日は麻友美にこのまま居座られては都合が悪いのだ。
麻友美はじっと亮平を見つめ、口を開いた。
「暇じゃん。」
こいつバカか…
亮平は溜息をつくと立ち上がった。
「とにかく。せっかく来てくれて悪いけど、今日はもう帰ってくれ。」
「えー!最悪!お兄ちゃんの彼女来るんでしょ?」
「そう。まだ彼女に麻友美のこと話してないしさ…」
「じゃあ今日紹介してよ、麻友美のこと。」
「いや、仮に話したとしてもさ…」
「何?なんか問題ある?」
麻友美は首をかしげた。
「絶対誤解されるだろ。」
「誤解?なんの?」
もう説明するのも面倒だ。
「少し考えりゃ分かること。今日はとにかく帰ってくれ。頼む。」
亮平は手を合わせた。
「ふぅーん…そっかぁ…」
麻友美は急に落ち込みはじめた。
「お兄ちゃん、彼女に麻友美のこと紹介してくれないんだ…お兄ちゃんの彼女だからきっと可愛いんだろうし…仲良くなりたかったのになぁ…」
麻友美は下を向いて落ち込んだ。
「お兄ちゃん…そういう人だったんだ…超がっかり…」
またはじまった…
亮平は頭を左右に振った。
都合が悪くなるとすぐに落ち込むフリをする。
時々、嘘泣き。
子供の頃から何度も使ってきた麻友美の奥の手。
表情まで真に迫っているが、これも演技だ。
その証拠に
「分かった。今日ちゃんと紹介してやるよ。」
「へへー。そうこなくっちゃ!」
麻友美はあっという間に立ち直った。
こいつを扱うのも楽じゃないな…
亮平は苦笑いを浮かべた。
「ただし…揉め事は起こすなよ。」
「りょーかーい!」
麻友美はとびきりの笑顔で敬礼してみせる。
亮平にはもう嫌な予感しかしなかった。
(隼人…どうやったら瑠奈ちゃんみたいな妹に育つんだ…教えてくれ…)
続く