予感というものは案外当たるものです。
現に今、僕の予感が当たったからです。
「きゃ!」
パリーン、カシャン。
・・・・・・二ノ宮さんが仕事を開始してから10分、割れた皿の総数締めて十枚。
1分に一枚のペースである。
二ノ宮慧子、恐るべし・・・・・・。
「もしかして一昨日のことまだ根に持ってますか?」
「なっ!わざとやってると思っているんですか!?」
「いえ、そういう訳では――」
「どうせ私は不器用ですよ〜!」
そう言ってそっぽを向いてしまった。
あらら、拗ねちゃいました。
昨日いきなりここで働く事になった二ノ宮さん。
一応家出中らしいので現在は僕が住んでいるこの喫茶店の2階に住んでいます。
僕が二ノ宮さんについて知っていることと言えば、名前と生年月日、それと今置かれている状況ぐらいである。
さてと、それにしてもこの拗ねている家出娘をどうしましょうか・・・・・・。
しばらくの間放っておいたら大丈夫ですかね。
そう思い、僕は仕事に戻った。
しばらくすると二ノ宮さんは普通にまた皿を割り・・・・・・もとい、仕事をし始めた。
「わわっ!」
パリーン。
「何の!」
カシャン。
「まだまだ!」
パキン。
割れるペースが上がって来ている・・・・・・。
「あの、皿洗いはもういいからウエイトレスしてくれないかな?」
このままやらせ続けたら店の皿が全部割れてしまいそうです。
「・・・・・・はい」
まあこれで大丈夫ですかね。
早速二ノ宮さんはお客様のいるテーブルに向かう。
「ごちゅ、ごちゅもんはお決まりでちょうか!?」
噛んだー!
ま、まさか・・・・・・二ノ宮さんってアガリ症!?
その後一つの注文を取ってくるのに、七回も噛んでいた。
「今日はお役に立つどころか、迷惑をかけてしまってすみませんでした・・・・・・」
「あぁ、大丈夫です。これから慣れていけば何とかなりますよ。それにしても本当に学校に行かなくて良いんですか?」
「はい、大丈夫です。別にあんな所行かなくても・・・・・・」
急に声のトーンが下がった。
昨日一昨日見た制服は確か聖光女学院のものだったと思う。
聖光女学院は有名なお嬢様学校のはずだからもしかして二ノ宮さんは良い所のお嬢様?
でもだったら何で家出なんか?
考えれば考えるほど疑問が湧くだけなので、僕はもう考えない事にした。