「まぁ、落ち着きなさい。何か飲み物でも頼む?」
「……そんな話を聞かされて、どう落ち着けって言うんですか!」
「彼女は無事よ、アナタが傍にいる限りはね…。
他人の話はきちんと最後まで聞くものでしょ?
違うかしら?」
顔色を変えていきり立つ俺を、手島美和は余裕ある大人の態度でヤンワリとたしなめてきた。
「…すいません。
ついカーッとなって…」
「気にする事ないわよ。
取り乱して当然ですもの、ウフフ…
アナタ、彼女を心から愛しているのね…」
メデューサとして美和が語った話によると、品川恵利花の内に潜む女神の魂が俺(倉沢諒司)の魂を呼び続け、二人を巡り合わせたらしかったが…
まさに『運命の出会い』というヤツなのか?……
「アナタには私と良く似たモノが備わっている様ね。
肌を合わせた相手の運命を変転させる能力が…」
「…美和さんもそうなんですか?」
フッと謎めいた笑みを浮かべた手島美和は、その問いに答えず、思いがけない話を切り出してきた。
「諒司くん。
急な話で何だけど、あなたコルスのマネージャーをやって貰えないかしら?
判っているだろうけど、私がオーナーだからオーナー命令でもあるわね。
ひとこと言っておくと、これはアナタ達二人の為でもあるのよ?」
「俺たち二人の?……」
俺は、今耳にした言葉の意味を即座に脳で処理し切れなかった。
そんな俺を見守りながら、美和はいつも通りちょっと意地悪そうにほほ笑んでいる。
そこでハッと我に返った俺は、彼女に問い掛けの眼差しを向けていた。