『クライアナノナカ』の真相 〜13〜 かつ、八人目

ヤルンヴィドの番犬  2010-07-03投稿
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私は、最後の切り札、
すなわち
『ジョーカー』
を出す事にした。



周りを見回すと、
客は私とディナー以外は
いない。

予定通りだ。

被害に遭う者は
少ないに越した事はない。














ディナーに、
裁きの鉄槌を。













私は、素早くテーブルに
手を伸ばし、
黒い携帯をかすめとった。

ほぼ同時に立ち上がり
脱兎の如く身を翻すと、
そのままトイレへと
駆け込んだ。

脇目から覗いたディナーは、別段驚くでもなく、
むしろ余裕を持って
いたように見受けられた。

だが、当然の行動だろう。
トイレのドアがすぐに
叩かれる。



「番犬さん、どうする
つもりですか?
携帯には仕掛けなんて
何もないから、
奪っても意味ないっすよ。
…てか、プライベート
携帯なんで返して
下さいよ」


ディナーの声色に
怒気はない。

この期に及んで
まだシラを切るのか。







…真相は、いずれ分かる。






このトイレには、
人が抜けられる程の
窓がある。


私は窓を開け、
躯をそこへ滑り込ませた。
私も、ディナーと同じ
くらい痩身だ。
抜けるのはたやすい。


そしてすぐ、
彼の持っていた
黒い携帯で、今この
投稿を打っている。


これで、私はもう
彼に会う事はないだろう。


正確には、もう
『会えない』
だろう。







教えよう。






私が彼を呼び出した
このバーは、屋号を

『dunkel Loch』

という。



ドイツ語だ。




ここが最大の罠だ。




直訳した意味は……

















  『クライアナ』。













彼は、

そノナカにいる

のだ。



それを今、私が
『書いて』
いるのだ。






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