パールが小さなタクトの元へ行こうとした時だった。
「待って下さい!」
フラットが叫び声を上げた。
「どうしたの!」
「夢の世界がとても不安定なんですよ」
フラットは空を仰いだ。
パールとウェドもそれに倣う。
「なんだ・・・これ」
三人の頭上を赤黒く、今にも堕ちてきてしまいそうな不気味な空が覆い尽くしていた。
そして、聴こえてきた。
「キキキキキ・・・」
三人はゆっくり後方を振り向いた。
「夢・・・過去・・・中から・・・コワス・・・」
音もなく現れた死神がじっと三人を見据えていた。
「タクトを元に戻せ」
ウェドがハンマーを構えた。
「キキキキキ、コワス・・・コワス」
死神の足が僅かに地から離れ、そのまま宙に留まった。
「本当に、死神みたいですね」
フラットは掌の中に杖を出現させた。
「キキキキキ・・・」
「気を抜かないで、しっかり構えて・・・くるわよ」
パールも弓を構えた。
三人に嫌な緊張が張りつめる。
「キキキキキ・・・コワス、コワス・・・・・殺す!」
死神が宙に浮いたまま向かってきた。
「来いよ!化け物!」
ウェドが向かってきた死神の腹に強烈な一撃を与えた。と、同時に死神の姿が消えた。
「どこだ!」
「キキキキキ、夢の中では、百戦錬磨」
「ウェド後ろ!」
ウェドの後ろには、殴ったはずの死神がウェドと同じハンマーを振り上げていた。
「させるか!」
フラットがウェドの足下に魔法で魔方陣を描き出した。
死神はウェドに向けてハンマーを振り下ろした。
「ウェド!」
死神のハンマーがウェドの頭に当たった殺那
「魔方陣『カウンター』」
魔方陣が光を放ち、死神がよろめいた。
「助かった!フラット」
死神の頭に鈍い痛みが走る。
「キキキキキ」
死神はフラットの後ろに現れた。
「ガキ、ガキ、殺す」
死神の手には杖が握られていた。
死神はフラットの足下に魔方陣を描いた。
「殺す」
フラットの足が地面に固定された。
「しまった!」
死神は武器をハンマーに持ち変えた。
「こっちよ」
パールの弓矢が死神の腕に当たった。
「キキキキキ、オンナノコ、殺す」
死神がパールの後ろに現れた。
「わたしには効かない」
パールは素早く振り向き、手に握った小さな玉を死神の目の前で炸裂させた。