―エルが生きていたら、あの子くらいになっていたかしら…。
そう考えた後、彼女は唇を噛み締めて首を横に振った。
「メディナ」
闇の中から一人の女性が顔を出した。
「何かあったの?」
メディナは目だけ彼女に向けて、尋ねた。
「宰相府が反乱を起こしたわ」
「え!?」
「王に危害を加えた訳では無いわ。保養所建設の予算を凍結しただけよ」
女性は青いショートカットの髪を揺らしかながら首を横に振った。
「で、どうなったの?」
「宰相は軟禁されて予算の凍結は解除されたわ。いくらあの王様でも王宮内で絶大な人気を誇る宰相を処刑する事はできなかったみたいね」
「なるほど。…この動きの後王宮内で何が起こっているのかしら?」
「宰相府は王に対する反発を強めているわ。表向きは従ってはいるけれどね。これによって軍事予算が一気に三分のにを占めるようになった」
女性は表情を変えずに淡々と報告した。
「そう…と、いう事は奴らが本格的にクリスタルを使用し始める時期が早まった訳ね」
「…残念ながら、ね」
二人は同時にため息を吐いた。
「ありがとう、サラ。これからも宜しく頼むわね」
「…」
サラと呼ばれた女性はその労いの言葉に返事をせず、じっとメディナを見つめた。