〜♪
毎朝聞こえてきたのは、クラシック。
モーツアルト、ベートーベン、リスト、ラヴェル、シューマン、エルガー、バッハ、シューベルト…
小さい時から私はたくさんの作曲家を知っていたし、たくさんの名曲を知っていた。
そんな中、私が何より好きだったのがピアノ。
だからピアノを弾くお兄ちゃんが羨ましかった
「あーもうピアノやーめたっ」
そう言ってお兄ちゃんは椅子から飛びおりた。
「お兄ちゃん、ピアノ弾かないの?」
「もう飽きた」
誰もいないピアノの椅子。
お兄ちゃんは背を向けて、漫画を読んでる。
私はそっと椅子に座ってみた。
白と黒が、きっちり並んだ鍵盤。
私はそれに触れてみた。
♪
お兄ちゃんが振り返った気がしたけど、もう気にしなかった。
いつも頭の中にあったメロディが、私の指先からこぼれるように響いた。
「!!……お、お母さん!!」
突然叫んだ兄の声に私は手をとめた。
怒られる
そんな気がして私は小さくなった。
やがてお兄ちゃんの後について母さんがやってきた。
ごめんなさい
私がそう言う前に母さんが言った。
「光希、ピアノやりたい?」