“国際ピアノコンクール1位”
“○○音楽コンクール優勝”
たくさんの賞。
気づけば私はどんどん上へのぼりつめていた。
でも、上へ行けば行くほどいつかおちていくかもしれないという不安が襲う。
上へ行けば、待っているのは下。
先へ進むのが恐くなる
でも、楽器は素直だ
私の不安は音に伝わってしまったらしい。
“正直期待外れ”
“背伸びしすぎたか”
多くの批評。
私はもう、疲れていた
「光希、ちょっと俺のバイトについてこい」
下を向いていた私をお兄ちゃんが連れ出した。
気がのらないまま、私はお兄ちゃんのバイト先であるスタジオにやってきた。
「お前ら久々やんけ。ちゃんと上達してんのか?」
ここはギターやベースを背負った制服着た学生が多いらしい。
私と違って人付き合いのうまいお兄ちゃんは来る人にいちいち愛想よく声をかける。
私はただ雑誌を眺めていた。
「お、きたきた」
お兄ちゃんの声に少し顔を上げると背の高い男子高生が二人、扉を開けて入ってきた。