「あれ?残りは?」
入ってきた二人にお兄ちゃんが声をかける。
「遅いからおいてきた。あ、いつもの部屋で」
眼鏡をかけた方が答えた。
「3のDな。あいつらもうすぐ来る?」
「多分。」
ちらっと目をやると、もう片方の男子と目があってしまった。
「慶太郎、最近はどうや?」
お兄ちゃんが黙ったままのその彼に声をかけた。
「絶好調。」
笑いもせずに彼は答え、二人は行ってしまった。
そしてそう、この十数分後、この小説の始まりの時がくる。
「りゅーちゃん、聖二達は?」
入ってくるなりその男子は親しげにお兄ちゃんに声をかけた。
「先に上行ったで」
音や声からして、おそらく5、6人だろう。
私は雑誌から顔をあげず、音で様子を探っていた。
「誰ー?」
彼らの一人が私に気付いたらしい。
私は無視を続けた。
でも、そのあと彼らの驚きの声につい顔を上げてしまった。
それがいけなかった
「なんなら仲間に入れてもらえば?」
あの時の兄の顔
今思えば、彼らと私を引き会わせたのは全部、お兄ちゃんの企みだったのかもしれない
あの時の、ああ言って笑ったお兄ちゃんの顔を思い出すと、そんな気がする