雨だ。
雨が降ってきた。
あの日と同じような
急な雨。
ちょうど
1年前ぐらいだろうか
僕は浪人。
君は大学生。
お互い違う大学を目指し
受験したけど
僕は全敗した。
じめじめとした
梅雨の日。
僕は君に呼ばれて
予備校の帰りに
いつもの公園へ行った。
そして
別れは突然やってきた。
まるで
ドラマや映画のように
君の別れの言葉と
同時に
雨が降ってきた。
別れを告げ
帰ろうとする君は
傘を持っていなかった。
「折りたたみがあるから」
と言って
ビニール傘を
君に渡した。
これが君にあげられる
最後の
精一杯の
優しさだった。
僕の前から消えていく
小さな背中を見送って
雨に濡れながら
帰った。
現実を受け入れられず
涙も出なかった。
そう。
あの日に似ている。
この急な雨。
『早くやまないかな』
なんて事を考えながら
家に向かう道を走った。
すると自然に
涙が出てきた。
次々と流れる涙に対して
思い出される君との思い出。
徐々に遅くなる脚。
涙が止まらないし
止めたくなかった。
だから
降っていてくれ
この涙が
気づかれないように
この涙が…
止まるまで。