生涯の恋人 8話

ふく  2006-08-29投稿
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私たちはそれから
好きな音楽 好きな映画 日常生活の些細なことを話した

気が付くと空はオレンジ色になっていた
「そろそろ帰ろうか?」

本当はもっと話していたかった

「そうだね。結局勉強してないけど。またさ、こうやって一緒に来ようよ。次はちゃんと勉強しに。」

彼からの思わぬ言葉だった

「そうだね、次はちゃんとね。」


私たちは駅に向かった

学校から駅までの距離は短い
この距離が今日は憎らしく思えた

「電車ある?」

「うん。結構本数あるし、大丈夫。」

「そっか。じゃあ気を付けて。今日はありがとう。」

「うん。じゃあまたね。」

手を振り改札を抜ける彼の背中を見送った


駅から家へ向かう独りの道はいつものように寂しく感じなかった

彼の顔をあんなに間近で見るのは久しぶりだった
ドキドキと気疲れだろうか
少し身体が重い

「疲れたな…。」

恋は楽しいけど
ときめきが多い分
まだまだ恋に未熟な私には相当なエネルギーがいる

「ただいま〜。」

家に着くと母親がご飯の準備をしていた
「結構遅かったね。勉強しに行ったんでしょ?頑張ったね。」

普段は家でゴロゴロしてる私を知っている母は 少し嬉しそうだった

「あんまりはかどらなかったけど。」

とてもじゃないが
『男の子と一緒に行ってた』なんて言えない

両親は厳しい
二つ上の姉が居るが姉は頭も良く真面目で 地元でも有名な大学に通っている
出来た姉だ

そのせいか私には心配ばかり
期待はそれ程されていないのは分かる
でも可愛がられているのも分かる
部活で遅くなっても心配して怒られることもあった
午後七時までには絶対帰らないといけないとゆう門限があるのだ
今『好きな人が居る』なんて言ったらどんな顔されるだろう 勉強しろと怒られるかもしれない

「朋美、あんまり食べてないじゃない。」

食事がのどを通らない
彼のせいだ

「食欲がないだけ。」

恋はここまで私を苦しめる

「ちゃんと食べなさい。大きくならないよ。」

母親の口癖だった


部屋に戻りベッドに横になった

目を閉じると彼との会話が頭を回る
不思議と彼の顔を思い出せない

こんなことを聞いたことがある
『好きになるとその人の顔はなかなか思い出せなくなる』

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