ある所に、三流ゴシップ誌の編集長がいた。
彼は横柄で、
我が儘で、
愚鈍で、
心ない男だった。
皆一様に彼を嫌っていたが、彼には権力があり、
誰も逆らえなかった。
ある日、部下で
オカルト担当の者が
彼に言った。
『そういえば、うちの
会社にも心霊スポットが
あるって知ってました?
ほら、誰も使わない
北側のエレベーター。
あれ、夜中に一人でに
開くらしいんですよ』
男は馬鹿馬鹿しいと
一蹴したが、
それからそのエレベーターを気にするように
なった。
ある日。
男は残業で夜中まで
会社にいた。
もう帰ろうかと荷物を
まとめオフィスを
出たが、
いつも使っている
二機のエレベーターは
どちらにも
『点検中』
の立て札がしてある。
ランプも点灯していない。
ここは十三階だ。
階段を使うのも
かなりきつい。
男は、北側の老朽化した
エレベーターへ
向かった。
その時は、部下の話など
気にとめてもいなかった。
北側エレベーターは、
ランプが点灯していた。
男は『下る』ボタンを
押し、しばらく待つ。
やがてドアが開き、
彼は足を踏み入れた。
だが、
そこにゴンドラは
なかった。
あったのは、
ただ真っ黒で真っ暗な、
何もない………
『クライアナ』。
ひゅううぅぅぅぅぅぅぅ
どさっ
終劇