「…少しは僕のことも頼って下さい。」
大山は、顔色ひとつ変えずに、冷たい眼差しを河内に向け、
「事務所に戻るわよ。」
その言葉は、河内の耳に届いてなかった。
「…僕は頼りないんですか!じゃあいいです?原田さんに相談して、ペア解消してもらいますから?」
大山は、河内の言葉に足を止めた。
「…好きにしなさい。」
コツコツと、パンプスの音が、徐々に遠くなっていった…。
大山より遅れて事務所に戻った河内は、早速事務所長の原田にその旨を伝えた。「大山さんとはやっていけません?」
原田は、険しい顔で河内を見つめた。それから、大山に尋ねた。
「大山!何か河内に嫌な事言ったのか?」
「いえ。街づくりコンサルタントの厳しさを教えただけですが。」
平然とした態度。河内は頭に来た。
「何であなたはいつもいつも…僕に厳しいんだ!」
河内がこの一言を言ったとたん、事務所が凍り付いた。
山崎、岡田、みずきが、
『言っちゃったよこの人』みたいな目で河内を見た。大山は、少し眉間に皺がよったものの、冷たい態度のまま、仕事の内容を伝えた。
「原田所長。これが、視察してきた商店街の写真です。」
原田も、河内の事は、気にせずって言ったら変だが、仕事モードに入った。
「シャッター通りと言われるほど街は衰退しています。この商店街には40もの店があった。ですが、今営業している店は、この事務所を含め7店舗しかありません。」
大山の内容を頷きながら聞く原田。その間、河内にこういった。
「少し…考えなさい。まだ初日だ。」
河内は、引き下がるしかなかった…。