「お久しぶりです。元気してました?」
「もちろん。かすみちゃんに会うまで、体調管理には、気を使ってたよ」
「またまた〜。それ、私以外の子にも言ってるでしょ−。」
「そんなことないよ。誰にでもって、そりゃ社交事例もあるけど、少なくとも、かすみちゃんに対しては、そんなつもりはないよ」
「本当ですか〜。哲さんは、クールだしもてるんじゃないかな〜って思うし、接し方も、優しく、クールなんだろうなあって思ったから」
「そりゃ、イメージだけだって。本当の俺は、少しおっちょこちょいなところもあるよ」
哲彦は、否定はしたものの、かすみの指摘には、戸惑いを隠せなかった。
もちろん、かすみも哲彦の、わずかな動揺を感じた。
「ところで、今回も、義人さんと来てるんですよね?」
「えっ?あぁ…まあね。別行動だけどね。」
「そうですよね。あっすいません。こんな話をして…」
2人の間に、しばしの沈黙が生じた。
「いや、いいよ。あいつのことが気になってるんだよね?」
かすみは、無言で頷いた。
「ごめんなさい…せっかく哲さんと話してるのに…」
「いや、構わないよ。あいつのことが気になることは、わかるし、正直でいいことだよ」
「すいません…」
「いいって。ただ、今日会ったら、伝えようと思ったんだ。君に出会えて、俺も義人も、過去にかかえてたトラウマが、多少なりとも解消出来たし、こんなおじさんになってから、恋愛と正面から向き合えてるから…」
「良かった…。あのね…哲さんは、今多分、将来的なことを考えられる人がいるんだと思う…。そして私に対しても、恋愛的な感情を持ってることも…すごく嬉しいけど…義人さんと話してわかったの。この人の心の闇は、まだ晴れてないってこと。私どうしても、あの人の心からの笑顔を見たいんです。」
「そうか…。わかった。そこまで言われたら、逆に応援するよ。確かに君の言う通り、俺もここ何年もあいつの心からの笑顔を見たことないしね…君に接することで、あいつが笑えるなら、応援するよ
…」
「ありがとうございます…」
気持ちよいくらい振られたことで、哲彦は、逆にさっぱりしていた。
(…そうだよな。自分を思ってくれてる人を、大事にしなきゃな)