ここからの話は京都は一切聞いた事がなかった。
京都は未だに優が警察官に執着していたのはまだ犯人が捕まっていないからと思っていた。
しかし、犯人は何と事件発覚の一週間後に犯人から出頭してきたのだ。しかも犯人は当時十八歳の未成年だったのだ。当然ながら犯人の名前と顔は公表されなかった。
しかし、犯人は反省の色を全く法廷に出さずに懲役十年を言い渡された。つまり犯人は事件から六年たった今もなお刑務所にいるはずだ。しかし、この事件にはどうしてもわからないことがあった。
それは一度安井家のみんなが死んだということで優の名前が死亡者リストに載っていたのだが、実際に殺されたのは同い年の京我だ。当時優が通っていた中学校から誤報を取り消してくれと申請を下されたのにもかかわらず警察はうやむやにしてもみ消したのだ。
その後も中学校や地域住民が申請をしようとしたがなぜか優はその件はもういいといってこの事件は終焉を迎えた。
ここまで聞いた京都は、あいた口が塞がらないほど驚いていた。しかも、自分が知らなかった六年前のことを初めて聞かされたので肩がブルブルと震わせていた。
優は心配をして
「すまない。まだお前にはつらい事実だったな」
と、目を伏せた。
しかし、恐怖におびえていても京都にはわかっていた。最愛の家族と親友を一度に失った後にも京都を守らなければいけない優の方が辛いとわかっていたが京都は自分のトラウマに勝てずに優に頼ってしまった。
そしてまた自然と涙があふれてしまった時だった。
「鏡君!」
風呂から上がった雪野は髪の毛にタオルを巻いたまま京都の元に駆け寄った。
また京都が涙を流している事から優から六年前の事件のことを聞かされたのだろうと瞬時に悟ったからだ。
雪野は京都の頭を抱いて「大丈夫?」と優しく声をかけた。京都を抱くと京都の震えが雪野まで伝わった。しかし、京都がしばらく震えていると何かに気づいたのかふと雪野をそっとどかして優に目を向けた。
「なぁ優………俺はお前が警察になる理由は絶対にお兄ちゃんたちを殺した犯人を捕まえる為だと、ずっと思っていた。だけど、お前の話からすると犯人はもう捕まっている……お前が警察になろうとしている理由はなんだ?」
京都は口元が震わせながらも質問をするとなぜか優は笑い始めた