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デフレーター  2010-07-07投稿
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さらに一週間後、今度は小夜子が異変に気づいた。
「ねえあなた…翼たちが言ってたこと、本当かも。」
夜、子供達が寝静まってから、小夜子は義之に訴えた。
「お前もか…増築もしてないのに家が広くなるわけがないじゃないか。」
義之はソファでくつろぎながら小夜子の訴えを取り合おうとしない。
「だって…買い物から帰ってキッチンに行くのに10分も歩いたのよ?」
「玄関からキッチンまではせいぜい10歩だろう?」
「昨日まではそのくらいだったんだけど…」
小夜子は不安そうな目で義之を見る。
「玄関からキッチンまでの廊下がすごく長いのよ。」
「俺が会社から帰ってからこの部屋に来るまではすぐだっただろう?」
「でも…」
「小夜子は疲れているんだよ。引っ越したばかりで。たまには休まないと…」
義之は小夜子の肩に手を置いた。
「…この家やっぱり変よ!すぐ引っ越しましょう!」
「何を言ってるんだ…まだ引っ越したばかりだぞ。ここは最高の家じゃないか…」
小夜子の表情は恐怖に怯えていた。
義之はそれを心配そうに見ていたが、やがてにっこり微笑んだ。
「とにかく、今日はもう寝よう。おやすみ。」
義之は家族が体験した現象をバカバカしく思っていた。
この後、決定的な事件が起こるとも知らずに…

それは日曜の出来事だった。
西森一家は朝から有名テーマパークに出かけ、車で2時間かかる道程を帰っている所だった。
夕方から雲行きが怪しくなりはじめてやがて雨が降り、自宅の近くになって雨は土砂降りになった。
「早めに帰って来れてよかったな。」
「ええ…」「うん…」
妻も子供も浮かない顔をしている。
あの日以来、妻と子供達は毎日のように家が広くなっているのを感じていた。
広さだけではない。翼は本来あるはずのない3階に続く階段を、未来は地下に向かう階段を見ていた。
階段を使おうとしたが怖くて勇気が出ないという。
さすがに義之にもわずかな不安が生まれていた。
自分だけは体験していないので半信半疑だったが…
車をガレージに入れ、走りながら玄関のドアを開ける。その時、一家は信じられないものを目の当たりにした。
「こ…これは…」



続く

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