「まさか…途中で迷ったんじゃ…」
翼は慌てて引き返そうとする。
「行くな!」
義之は翼を止めた。
「でも!」
「もう少しで出口のはずだ…出たら…助けを呼んでお母さんを助けだそう。」
義之はそう言って翼の肩を叩くと、また走り出した。
翼も再び未来の手を取って走り出す。
走っても走っても、一向に出口が見えない。
もう1時間も走っている。
義之は時々自分が何故走っているのか分からなくなったが、立ち止まるわけにはいかなかった。
その時…
「きゃあ!」
「未来!」
未来が力尽き、転んだ。翼が慌てて側にしゃがみ込む。
「大丈夫か?おんぶしてあげようか?」
「私のことはいいから…早く走って…」
「でも」
「大丈夫…すぐ追いつくから…」
未来は立ち上がろうとしたが、すぐ崩れ落ちた。
「未来!」
「だめ…みたい…私、足引っ張っちゃうから…お兄ちゃん、早く…」
未来は目を閉じると、そのまま昏倒してしまった。
「くそっ!」
翼は涙を拭いて立ち上がると、一気に駆け出した。
未来…絶対助けるからな…
義之は夢中で走っていたせいで、子供達に起こったことに気づかなかった。
「義之…?」
走りながら叫ぶが返事がない。
「まさか…」
子供達をも見放して逃げるか…
義之は迷った。
しかし…ここまでかなりの距離を走ってしまった。
引き返せばすぐに力尽きる。
義之は前に進むことにした。
翼はとにかく急いだ。
足はすでに棒のようになっていたが、力の限り走った。
この地獄を抜け出して、お母さんと未来を助けて、
新しい家で幸せに暮らす。
そのために
全力で走った。
その横で
次々に発生する廊下や扉。
あろうことか、翼は急にトイレに行きたくなった。
「くそ…なんでこんな時に」
翼は我慢しきれず、扉の一つを開けて急いで用を足し、再び元の道に戻ろうとした。
「うわぁぁぁ!?」
そこにあったのはさっきまで走っていた廊下ではなかった。
床一面、壁にまで蔓草が巡らされた空間。
蔓草は不気味な音を立てながら伸びつづける。
空間そのものもぐにゃぐにゃと曲がっている。
翼はその場で気を失ってしまった。
続く