『目覚めの衝撃』
酷い頭痛で目が覚めた。気付くとそこは見知らぬ路地裏だった。
「私……どうしてこんな所に?」
頭痛のせいか、思い出そうとしても痛みがそれを邪魔する。一般的にこんな路地裏に女が倒れているのはどう考えても普通ではない。
「お前もか」
不意に、背後から凛々しい女の人の声が聞こえた。
「だ、誰?」
薄暗い路地裏の闇から姿を表したのは、黒いロングヘアーの女の人だった。僅かに当たる電灯の明かりで光を放つ真っ赤な目は、私の中の恐怖を更に駆り立てる。
「いきなりで悪いが、お前は世界にとっての不必要因子(バグ)だ」
何を言っているのか分からないけど、バグだと言われた衝撃はハッキリと分かった。
「私は、バグ?」
「そうだ……私達はバグなんだ。だからこうして世界は、私達を消しにくる」
そう呟く女の人の背後から、毛むくじゃらの獣が飛び出して来た。暗がりでもその大きさは分かる。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
私の悲鳴が路地裏に響いたと同時に、女の人は何処からともなく、何もないはずの空間から大きな刀を取り出した。
「はぁぁぁぁ!!」
女の人の怒号と共に、路地裏は獣の鮮血で赤く染まる。いつの間にか斬られていた獣が後へとよろめいた。
「これで……終りだっ!」
一瞬の溜めの後、女の人は横なぎに刀を振り、獣を上半身と下半身とに別れた。斬り口からは溢れ出す様に真っ赤な血が流れ続ける。
「あ……ああ」
目を疑いたくなる光景に、言葉を失う。血だらけの路地裏、血だらけの女の人、血だらけの私。
「君は、私と同じ力を持っているはずだ」
同じ力? そんなのあるはずがない。だって私は、何もない所から刀を出したり出来ないのだから。
「嘘……」
「なら今、君がその手に持つ盾はなんだ?」
そう言われて初めて気付いた。私の右手には、確かに何かを掴んでいる感覚がある。
「いや……こんなの違う!」
そして、私は慌てて右手に掴んでいる盾を放した。
「それが君の力だ」