噂があった。
誰が始めた噂なのか、何のために始まった噂なのか。
誰も知らない。
ただ、それは優しく、温かい噂だった。
本当にそんな事があるのなら、私も体験したいとさえ思えた。
暑い夏の日、どこの公園か分からないのだけれど。
公園に金魚売りの屋台がいる。
その公園の一番大きな木の下に、その金魚売の叔父さんはいるらしい。
叔父さんの売っている金魚の中に一匹だけ、七色の色をした金魚がいる。
その金魚には不思議な噂があって。
その七色の金魚を一週間飼うと忘れたい悲しい恋の思い出を綺麗に消してくれるらしい。
金魚が七色に綺麗に輝くのはたくさんの悲しい涙を泳いできたからと言う人もいる。
本当のところは誰も知らない。
金魚売の叔父さんは、悲しい思い出を持った人にその金魚を「貸してあげる」と言って消えるらしい。
そして、悲しい涙をたくさんもらった金魚は一週間後に悲しい思い出と一緒に消えてしまうらしい。
そんな噂があるらしい。