〜それはまだ夢物語に出てくるような、幻獣や精霊が人間と共存していた頃の物語〜
[赤い旅人]
街は夜の雨に包まれていた。
さほど大きな街ではなかったが、国境に位置するそこは人々の往来が激しく、商人や旅人…各地方へ旅立つ者の休息の街として栄えていた。
雨あしは夜が更けるとともに増し、いつもなら旅人たちが露店で酒を飲み交わし、街角の賑わいもある時間ではあったが今夜は街は静だった。
ある一角をのぞいて。
街一番の大きな宿場「ランタン」一階の酒場には雨をしのぎ酒を求めどこからともなく集まった旅人や商人、街の酒好き達でごった返していた。
旅の自慢話や笑い声、喧嘩や賭事何でも有りでそれぞれが雨の夜を過ごしていた。