「ホラーってさ…何かありふれちゃってんじゃん。ネタ的に。」
「まあねー…」
「それにさ…お前こないだ書いたホラー…あれ、限界か?」
渉は見透かしたように言った。
「正直…あれが全力。」
「じゃあだめだな。」
「えー…あれ結構怖くなかった?」
「いや、別に。」
「はあ!?」
渉のさらりとした返事に、Dは思わず叫ぶ。
「何かイマイチ中途半端なんだよな。ストーリーも怖さも。」
今まで自分の作品を評価してくれていると思っていただけに、Dのショックは大きかった。
「あれがお前の限界なら、先はないな。」
「うーん…じゃあやっぱコメディかな…」
再び液晶と睨めっこする。
「あのさ、はっきり言っていい?」
渉は口を開いた。
「ん?」
「お前の小説、つまんないよ。」
「そんなはっきり言う!?」
「だってほんとだし。」
Dのわずかなプライドが玉砕される。
それでも何とか苦笑いを浮かべる。
「でもさ、評価してくれてる人もいるかもしれないじゃん。」
「じゃあ、お前、小説に感想もらったことあるか?」
「いや、見てない。」
「見ろよ。」
「だって怖いし。」
「結局自信ないんじゃん。」
「あるさ!」
「じゃあ見てみろよ。」
Dは少しムッとしながら過去の作品に寄せられた感想を見返した。が…
少ない。
同じ携帯小説サイトに投稿されている他の作品に比べ、
Dの小説には感想が圧倒的に少なかった。
「そんなばかな…」
「な?」
携帯画面を覗き込みながら渉が得意げに笑う。
「大体お前文章がひどすぎるよ。表現も一貫してないし、描写のパターンも少ないし。何よりストーリーが無茶苦茶すぎて読み手に全く伝わってないよ。」
「…そこまで言うかよ。」
「例えば最初に出てた感動ものだって。登場人物最初から最後までほとんど同じことしか言ってねーだろ。」
「確かに…」
「挙げ句ラスト付近でいきなり展開変えてるし。あれじゃ読者ついてけねーよ。もっと伏線を要所要所に入れないとさ。」
「それが出来たら苦労しねーよ」
渉に一方的にまくし立てられ、Dの自信は完全に崩壊していた。
続く